日本政治史

「少数派閥を率いながら総裁を目指す中曽根は,派閥全盛の時代だけに立場の変化が目まぐるしい。そのなかで一貫していたのは,憲法原子力,対外政策への関心である。」(115頁)

「中国の存在がまだ巨大でなかったにせよ,日中提携と対米協調を両立できた指導者は,日本外交史をたどっても多くない。」(234頁)

貿易摩擦靖国をめぐる不協和音のほか,数々の問題発言もあったものの,中曽根はアメリカだけでなく,中国や韓国の指導者とも良好な関係を築いた稀有な政治家である。軍事,経済の両面でアメリカの圧力に適応しながら日米同盟を強化し,中韓とも連携を深めることで,中曽根は新冷戦下での対ソ戦略を有利に進めた。
 その背景として,日本経済が全盛期を迎えていたことはあるにせよ,ここまで体系的に世界政策を構築した日本の政治家は中曽根以外におらず,戦後外交の頂点といっても過言ではない。」 (277頁)

「中曽根政治の特質は,審議会を多用した「大統領的首相」という手法にあった。」(281頁)