アジア

香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

香港 中国と向き合う自由都市 (岩波新書)

「〜美しい言葉で語れば,香港は戦後,公平・公正な法制度・税制の下,特定産業に対するえこひいきのない,自由競争の経済が守られていた〜」だがその実態は,超過密難民都市でのむき出しの競争である。住民,特に圧倒的多数の難民同然の中国系住民にとっては,自力で生き延びねばならない苛酷な環境でもあった。」 (50-51頁)

「〜〜脱植民地化も未完に終わったことを意味する。香港市民が自ら政治の主体となって,政府の長を選ぶしくみができなかったからである。」
「中英の双方とも,香港に政治的な自決権としての自由を与える強い意思は持たなかったのである。」 (68頁)

「香港には膨大な「文化」はある。だが,香港人にとっての文化とは何か。「香港の文化」とは何か。それはわからない。〜〜文化はある,だが特に語る必要を感じない。」(125頁)


「制度面で十分な自由の空間が保障されている日本に対して,香港の自由は常に植民地当局や共産党という強権と相対し,極めて脆いもの,不完全なものにも見える。しかし,香港市民はこれまで,与えられた自由の空間を存分に活用してきた。自由を使うことが香港の活力であり,それによって香港そのものが,独自の存在として生き延びてきたのである。」 (225頁)