国際政治史

すでに読んでいたけど。

国連と帝国:世界秩序をめぐる攻防の20世紀

国連と帝国:世界秩序をめぐる攻防の20世紀


「具体的に言うと本書では,関連しあう二つの歴史上の定説に異議を唱えたい。一つ目は,アフロティテが泡から生まれたのと同じ様に,国際連合第二次世界大戦のなかから生まれたのであり,純粋であって,大戦前の失敗作の国際連盟とのいかなる重要なつながりにも毒されていない,というものである。そして二つ目は,国連がなによりアメリカのものであり,公開の討議の場でも秘密の話し合いにおいても他の国々はほとんど役割を果たしていないところで生み出された,というものである。」(15頁)

「国連はスマッツの意図どおり世界秩序維持のための力として誕生したし,その傘の下でイギリス帝国は文明化の使命を為し続けることができた。」(71頁)

「おそらく戦間期インターナショナリズムの卓越した理論家であったジマーンは,著作においても生き方においても,ヴィクトリア朝の人間の古代ギリシャ・ローマ人の残したものを読む習慣と,イギリスが世界中を指導するという道義的イデオロギーと,新しいリベラルなインターナショナリズムとの緊密なつながりを明確なものとした人間だった。」(76頁)

「本章〔第3章〕は,ヨーロッパにおけるナチス支配についての戦間期の分析者たちが,マイノリティの権利,民族自決,難民の福祉などの将来にとっての処方箋を,戦争中に起こったことの解釈に基づいていかにまとめたかを掘り下げる。とりわけユダヤ人の最終的解決についてが明らかになるにつれ,アメリカ合衆国の時事問題解説者や活動家たちは,ヨーロッパにおける戦後のユダヤ人問題に対し,同盟した連合国側はどのように取り組むべきかを議論した。」(114頁)

「不快な真実は,国連がいかに覚束ないものであったとはいえ国際連盟のマイノリティ保護への取り組みを,効果的な代案も定めずに放棄してしまったということだった。」(159頁)

国際連合国際連盟に比して,強大国によって運営されることになる可能性が遥かに大であったし,パワーポリッティクスから独立し,かつその上位に措定される規範としての国際法に依存する度合いは遥かに小さかった。」(163頁)

「国連の時を超える柔軟性と,再生能力とは,疑いもなく,その欠陥に劣らず顕著なものである。」(206頁)

「ホワイトホールの実際的なものの観方からは,国際連盟はよって,アメリカ合衆国との同盟を強化し,ボルシェヴィにズムに対抗して東欧にいわば支え棒をし,イギリスのヨーロッパへの関わり合いと己が帝国への関わり合いを連動させるのを同時にやってのけられるかに映る「帝国の事業」だった。」

「実際のところ,第一次世界大戦前夜の世界に直面して思い描かれた国際機構の,法的側面を重視する選択肢も道義性を重視する選択肢も,どちらも一世紀後には,主権国家というものが世界中で凱歌を揚げたことで敗れてしまったと言える。」 (215頁)

国連憲章に見られる曖昧さと国連内部からの行動主義とが柔軟さと適応性をもたらしたように,国際情勢の只中にいないということが存続をもたらしたのかもしれない。」……
「国連は,国連憲章からはうかがい知れなかった機能だが平和維持のための機関を通じて,また国際連盟から引き継いだ専門機関を広く拡大することによって,国際社会に介入してきたのである。」……
「国連が誕生した歴史的・政治的な文脈をいくぶんなりと理解することなくしては,われわれは,過去の議論を首尾良く超克するのでなく,単に過去の議論を反芻し続けることになる可能性が高いのだ。」 (218頁)