西洋史

海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム (講談社選書メチエ)

海洋帝国興隆史 ヨーロッパ・海・近代世界システム (講談社選書メチエ)

「オランダを中心として生まれたヨーロッパ世界経済は,北方ヨーロッパの海運業の発達により,地中海を呑み込んでいったのである。」(86頁)

「新世界の「発見」から18世紀後半まで,大西洋経済とは基本的に中南米経済を意味した。
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本質的に大西洋経済形成にとって重要なことは,西アフリカから奴隷を持ち込み,新世界で砂糖を生産させるシステムであった。このシステムが形成されていく過程で,大西洋はヨーロッパ人の内海となったのである。」(100頁)

「ロシアという国があったからこそ,イギリスは近世の重商主義帝国の形成,さらには産業革命に成功した。大西洋貿易の拡大により,ヨーロッパ大陸では,ロシアこそがイギリス経済の生命線となったのである。」(120頁)

「18世紀のヨーロッパ史研究において,アムステルダム,ロンドン,ハンブルクの三都市の関係は非常に重要である。もしこのうちの一つ都市だけが重要であったとすれば,その都市に問題が生じた場合,ヨーロッパ経済の機能が著しく低下した可能性がある。三つの都市があったからこそ,戦争の時代にリスク回避をすることができた。」(172−173頁)

「オランダは,帝国を形成することなく,商人が自ら海運業を拡大していった。それに対しイギリスは,まず帝国内部の海運業を自国船でおこない,ついでイギリスの勢力下にあった「非公式帝国」で,最後に世界中でイギリス船を使用するようになった。ここでも,イギリスとオランダの海運業のあり方は,大きく違っていたのである。」(178頁)

「電信は「見えざる武器」であり,経済のゲームのルールを決定するもっとも重要な武器となった。産業革命によって工業製品を輸出できただけでなく,電信によってイギリスの世界支配=ヘゲモニーが完成したのである。」(208頁)