社会学

「自分の頑張り次第で,AV女優としての活動,もしくは自分の生活が改善される,といった状況で,AV女優が自発的により多忙になっていく様,AV女優の価値が多元的な指標により測られる事情が,長く活動する女優のプライドを巧みに変質させ,活動を支え続ける」(214頁)

「どんな風に自分を見せるかということに彼女たちは向き合うことを生業にしている。そして彼女たちは,異様なほどはっきりとした動機をもった姿をつくりだす。」(242頁)

「インタビューで語られる動機は,確かに戦略的につくられたものであったかもしれない。しかし,それが事後的に内面化し,実際に彼女たちのものとなっていくことがある。ありのままを語っているわけではないのに,事実が語られる言葉に寄り添うようになり,結果として語られる内容と現実の彼女たちの意識が一致してくるのだ。」(249頁)

「彼女たちにとって,常に動機や自分について問いを向けられ,メディアに向かって語るという行為は,どうやら業務や戦略を超えた意味のあるものであった。それは,……視聴者のためにつくられた業務が結果的に彼女たちの意識の中に内面化され,彼女たちが仕事を続ける拠り所となっていく,そしてその姿が再度メディアに浮かび上がる,という相互参照的なAV女優の語りの構造を示すものである。」(259−260頁)